Quantcast
Channel: 知財アナリストのひとりごと
Viewing all articles
Browse latest Browse all 913

知られざる特許の旅 第6回  明治の初めの専売特許権者は儲かった? それとも・・・・・・ その2

$
0
0

 前回からの続きで、同じ、櫻井乃介

さんの「箱の蓋締金具」です。

 

f:id:oukajinsugawa:20150825155215j:plain

 

 明治20年9月から21年4月まで

1個8銭と決めたんですが、一般

販売をする前に、し尿運搬にはこの

金具で密閉する必要があるということで、

大阪府で採用してくれることになり、

明治20年10月以降は、し尿運搬桶

にはこの金具で密閉することという

お触れを出したのですが、種々の

苦情が出て改良出願中となり、残念

ながらまだ販売できていないんです。

 

 とはいえ、自分で販売するのは大変

だということで、大阪下島町2丁目

阪栄組に一手販売を委託しています。

 

 次は、東京の松井総兵衛さんの「射的

機械玩具」です。

 これは、実施以来明治21年4月まで

で(1年8か月です)販売は500個、

売上合計32円50銭だったそうです。

 

 この発明は輸出品にできるため、

申し込みをおこなうものが多かったんだ

そうですよ。

 

 ただし、製造道具の費用がかさんで

しまい、新聞広告料を除いても、40円も

かかってしまったんです。

 

 赤字だったんですね。

 

 次も、やはり東京の松井総兵衛さんの

「洋灯防風具」というものです。

 

f:id:oukajinsugawa:20150825155246j:plain

 

 実施から明治21年4月までで

1年8か月経過し、まずは500個も

作ったのに、売れたのは200個に

届かず、販売額は9円内外だったん

です。

 ということで、この特許年限は10年

のため、15円を特許局に払い込んで

おり、特許以来の損益は、販売金額

9円を差し引くと、3~40円の赤字

だったんです。

 

 これには新聞広告料が入っていない

ので、赤字はもっとだったんですね。

 

 ちなみに、洋灯(洋燈)って言っても

現代の我々には何のことやらさっぱり

わかりませんが、明治の時代には、ランプの

ことを「洋燈」って言ったんです。

 

 明治の時代の夏目漱石さんの小説、

「ふたたび」とかに卓袱台(ちゃぶだい)

とかの昔の言葉とともに、この言葉は

頻繁に出て来ます。

(卓袱台っていっても、現代人には何だ?

という話になりますが、まあ、「巨人の星

の「星一徹」さんが、ひっくり返すアレ!と

言えばイメージが湧くのでは???)

 

 次は、水力応用玩具でやはり東京の

松井さんです。

 

f:id:oukajinsugawa:20150825155326j:plain

 

 松井さん、熱心な発明家だったん

ですね。

 

 このおもちゃは、水車とばねを

応用して、いかにも鯉の滝登りの

ように見えるおもちゃだそうですよ。

 

 明治20年8月から21年4月まで

25個売れて、売上4円25銭だった

そうですので、一つ17銭だったん

ですね。

 

 残念ながら、損益詳細は不明だ

そうですが、この専売特許の年限も

10年でしたので、特許局に払い

込んだのは15円ですので、完全に

赤字でした。

 

 その他、松井さんの特許は、明治19

年3月31日の下水桶浚溝器、19年

5月18日の頸墜止洋灯釣手があるの

ですが、これらの全部で5つの特許を

合計すると、出願・登録等費用105円、

原材料費85円、製造道具160円、

総売上約50円でした。

 

 「えーっ、めちゃくちゃ赤字じゃん」と

いうことで、専売特許は、お金持ちの

道楽だったんでしょうか??

 

 きっと違うと思いますが、まあ、松井

さんがお金持ちだったのは確かでしょう。

 

 続く

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 913

Trending Articles