Quantcast
Channel: 知財アナリストのひとりごと
Viewing all articles
Browse latest Browse all 913

AgIC

$
0
0

 何だ?「AgIC」って?というところ

ですが。

 

 AgICさんの本名?は、「AgIC株式会社」、

設立が2014年1月、社長さんは清水信哉

さん、本社は東京本郷、資本金6,520万円、

事業内容は電子回路のプロトタイピング

ツールの開発・製造という会社です。

 

http://agic.cc/ja

 

(HPの資本金は、上記となっていますが、

2015年1月に、借入と第三者割当増資に

よる調達で、合わせて約1億円を調達して

いますので、現在は、もう少し資本金が

多いかも知れません)

 

 この企業は、「導電性の紙に書けるインク

を発売しているんだ」ということで、結構、

テレビなどで取り上げられており、紙に

線を引いて、その線の端に豆電球を付けて

電池をつなぐと、豆電球が光るので、

「へー」などと、出演者が驚くお約束に

なっています。

 

 この企業は、東京大学発のベンチャーで、

実は、紙に書けるインクというのは、この

企業さん独自のものとか目新しいものでは

なくって、導電性インクを使うのはもちろん

ですが、キモは、東大の川原先生等が開発

した、以下の、家庭用のプリンターで簡単に

回路を印刷できる技術なんです。

 

http://research.microsoft.com/pubs/201273/ubi1415-instant%20inkjet.pdf#search='Instant+Inkjet+Circuits%3A+Labbased+Inkjet+Printing+to+Support'

 

 試しに、WEBで「導電性インクペン」と打ち

込むと、ほかのメーカーさんもいろいろ出て

きますし、この導電性インクを供給している

三菱製紙さんの製品も出てきます。

 

http://diamic.jp/shop/item/circuitry-marker/

 

 ということで、AgICさんは、手軽に専用紙に

電気回路をプリントできる技術やその応用の

開発をおこなっているわけですが、どんな

開発をおこなっているのか特許出願を調べて

みましょう。

 

 川原先生からの印刷技術についての出願は

ないのですが、AgICからの出願が現時点では

1件だけありますので覗いてみると、出願は

2014年1月、特開2015-135901「組み換え

回路装置、回路部品ユニットおよび印刷用

画像データのデータ構造」となっています。

 

 従来から導電性のインクを用いて、基板上に

インクジェット方式によりパターンを形成する

技術などあるんですが、このようなインク

ジェット方式により形成されたパターンは

導電膜を固化するための加熱処理が必要で

あったり、インクジェット印刷装置も

高価な、専用のものが必要だったんです。

 

 これに対し、近年、銀ナノ粒子を使用した

インクの開発などにより、市販のインクジェット

印刷装置を利用して、紙や樹脂フィルムなどの

シート状印刷媒体上にインクパターンを印刷

する技術が川原先生等により研究され、加熱

などの後処理を要することなく、迅速かつ

低コストで導電パターンを形成する技術が

開発されたんです。

 

 したがって、これを現実のものとすべく、

また、複数の回路部品を実際に組み合わせて

接続することにより電子回路の仕組みや

動作を確認するための教育的用途や、

電子回路の試作の用途などのために、

複数の回路部品ユニットを有する

導電パターンシート上で、複数の回路部品

ユニットから選択した回路部品ユニットを

着脱可能に載置することにより、所望の

電子回路を構成することができる組み替え

回路装置、回路部品ユニットおよび印刷用

画像データのデータ構造を開発したんです。

 

f:id:oukajinsugawa:20151020151317j:plain

f:id:oukajinsugawa:20151020151333j:plain

 

 ということで、AgICさんのホームページに

あるように、AgICさん、回路マーカーや、

回路インクカートリッジ、専用用紙を販売

しているんです。

(プリンターは、どのメーカーのものでも

良い、というわけではなさそうですが)

 

 ということで、AgICさんは、これから

いろいろ開発して行くんでしょうが、

じゃあ、そもそも導電性インクなどは

どうなってんだ?というのをちょっと

調べてみましょう。

 

 技術分類で、導電性インクってある

のか?というと、IPCやFIでちゃんと

あるんです。

 

 ただし、IPCやFIではインクではなく

って、導電性イン「キ」となっていて、

C09D11/52(2014.01)となっています。

 

 見てもらうとわかりますが、2014年の

1月に新設されたものですので、これで

検索すると古いものは出ないんです。

 

 それでは、Fタームではないかいな?と

いうと、4J039EA24が「導電性インキ」

なんですね。

 

 ということなので、得意の「いいかげん

検索」で、上の技術分類で検索すると、

昔から、セイコーエプソンとか、東洋

インキ、パナさん、富士写真フイルム

凸版、リコー、大日本印刷ゼロックス

などなど、いろんなところで研究されて

います。

 

 AgICさんで使用しているインクは、

銀ナノ粒子インクというもので、以下の

三菱製紙株式会社でいろいろな製品が

でています。

 

銀ナノ粒子インク | 三菱製紙

 

 さらには、日本電子回路工業会からも、

三菱製紙さん、賞を受賞したそうです。

 

 ちなみに、三菱製紙さんの特開2013-

104019「導電性インク組成物」などを

見ると、水性媒体中に、硝酸銀等の

水溶性銀塩デキストリン等の多糖類

からなる天然ポリマーの存在下で水酸化

カリウム等の塩基性化合物を加えて

還元した後にセルロース類を分解する

酵素である、セルラーゼ、アラパナーゼ、

ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、

キシラナーゼ、なーぜ?なーぜ?等で

(「なーぜ?なーぜ?」というのは

うそです)酵素処理して得られた

銀超微粒子と、アルギン酸および

その塩から選ばれる化合物を含有

させるんだ、などと書かれています。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 913

Trending Articles