ということで、今回も工業所有権制度
ならないように配慮しながら、有用な情報を
調べてみましょう。
(特許庁さん、参考にさせていただきます
ので、よろしくお願いしまーす。)
工業所有権制度百年史では、江戸時代から
使用されていた商標で、商標条例施行直後
から明治30年代にかけて登録された商品の、
薬剤(売薬)、清酒、醤油が取り上げられて
いますので、プラピさん(J-PlatPat)で調
べてみましょう。
・ 透頂香外郎
・ 朔日丸
・ 喜谷実母散
・ 中橋元祖千葉実母散
・ 奇応丸
・ 宇津救命丸
・ 反魂丹
・ 白鷹
・ 白鶴
・ 白雪
・ 剣菱
・ 沢之鶴
・ 白鹿
・ キッコーマン
・ ヒゲタ
・ ヤマサ
(以下に二つ同時に示しています。)
結構、今でも続いている商標が多い
ですし、お酒などは皆、今でも、「あー、
あれね。」というものばかりですね。
ところで、商標法の第3条第1項という
ところには、「商標出願しても、登録できな
いんでっせ。」という不登録要件が書かれて
おり、この第2号では、「慣用されている
商標も、登録できないんでおま!」と書か
れています。
じゃあ、どんな商標が慣用商標なんだ?と
いうのは、商標審査基準(一番新しいものは、
以下のように13版です。)に、例が書かれて
おり、たとえば、「正宗(清酒)は、慣用商標と
なってるんですばい!」、となっています。
(下のURLの3-1-2というところを見てください。)
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/pdf/13th_kaitei_h29/13han.pdf
この正宗については、工業所有権制度
百年史に、いきさつが詳しく書かれていま
すので、ちょっと引用させてもらいましょう。
(古い漢字や仮名使いは、現在のものに直
しています。)
(櫻正宗の商標登録は以下です。)
「現在でも慣用商標の代表的なものとして、
「正宗」が挙げられるが、これは、「櫻正宗」
(上の登録981号です)の商標の由来と
密接に関連している。
すなわち、「櫻正宗誌」によれば、『家祖は
山城国深草なる元政庵住持と親交があった
が、かつて住持を草墟に訪ねた時、その
机上に「臨済正宗」と書いた経典のあるのを
見て、その「正宗」が「清酒」と語音相通じて
いるところから、家祖は正宗を樽印として
名づけた。』」
ということで、そうこうするうちに、
「『我醸酒が著しく世上に伝えられたのは
天保のことであるが、爾来正宗の益々揚る
に従い、安政の頃に至って他の醸家この
銘を冒すもの続々起こり、ついに正宗の銘を
付けなければ清酒の商標でないと心得る
ものもあって、正宗は清酒の代名詞の如き
感を成すに至ったので、直接間接に、その
損害を受けることが少なくなかった。
しかし、当時はまだこれを取り締まるべき
法令がなく、法律上の保護を受けることが
できなかったのであるが、明治17年6月
商標条例を制定発布せられたので、正宗の
銘に関する事歴を時の農商卿西郷従道候に
上伸して、商標登録を出願したのである。』」
ところが、ところが、
「『当局もまたその意を了とせられたのであっ
たが、時すでに正宗の銘を用いるものすこぶる
多いという有様であったから、当時の兵庫県
知事内海忠勝氏もその虞理を大いに苦しんだ
のである。』」
(櫻正宗株式会社の本社は、以下のように、
兵庫県神戸市東灘区です。
http://www.sakuramasamune.co.jp/
)
そこで、
「『政府は、ついに正宗の銘を普通名詞とする
ことを勧めたので、正宗の商標に紅色複弁の
としたのである。』」
ということで、いまだ、「正宗」は普通
名詞にはなっていませんので、「旦那、清酒に
「正宗」は、慣用商標だから、登録できま
せんぜ!」と、慣用商標とされるようになり、
登録できなくなっているんです。
うーん、納得。
商標について聞かれたら、この蘊蓄を、試験官の
方々に披歴してあげましょう。
(きっと、「ながなが、聞かれてねーこと答えん
じゃねーよ。」と怒られること請け合いです。)
ちなみに、以下の、「櫻正宗の歴史」という
ところにも、同じようなことが書かれています。
http://www.sakuramasamune.co.jp/company/masamune.html
続く