この前、がっちりマンデーというテレビを
見てましたら、パンクしないタイヤという
のをやっていました。
どんなタイヤかというと、自転車の
タイヤなのですが、スポンジの樹脂の
繊維で作られた素材を、空気を入れた
チューブの代わりに充填するのだそうで、
空気チューブがありませんので、釘や
画鋲の上を走ってもパンクという状態
にはならないんですね。
問題は、空気チューブよりも重く
なってしまうことだったそうですが、
軽量化に成功し、今年の春の販売を
目指しているんだそうです。
(と、テレビで言っていました)
このタイヤを考えたのは千葉のタイヤ
ウォールというお店の代表の伊澤光輝
さんという方で、名前はエバーチューブと
言うんだそうですね。
会社の名前は株式会社デファクト
スタイルというそうで、商標を検索
すると、標準文字商標「EVARTUBE」で、
2014年11月に第5718364号として商標
登録がされていました。
(「EVERTUBE」のスペル間違いでは
ありませんので、念のため)
タイヤウォールさんの以下のHPを
見ると、テレビ放送後、問い合わせが
殺到しているそうで。
http://tirewall.jp/shop/?cat=12
ということですので、どんな技術内容
なのか、ちょっと調べてみましょう。
「プラピ(J-PlatPat)さん、お願いね」と
念じると、出てきましたね、実用新案登録
第3181271号。
特許出願ではなかったんですね。
出願が2012年11月、登録が2013年
1月で、考案の名称は、「空気タイヤ
内蔵用クッション」となっています。
課題としては、「一般的な空気タイヤ
及びパンク防止対策済空気タイヤと比較
して、パンク防止性能を向上させるだけで
なく、乗り心地、走行性、耐久性又は
安全性を維持又は向上させることが
できる空気タイヤ内蔵用クッションを
提供する。」
ことで、
解決手段としては、「本考案の空気タイヤ
内蔵用クッション1は、ホイールリム20に
装着されたタイヤ10の内側形状と同様の
形状であって中実又は中空に形成されて
いるタイヤ支持部2と、ホイールリム20の
内側部分のうちタイヤ10が接触していない
部分の形状と同様の形状であって中実
又は中空に形成されているリム支持部5と、
を備えているとともに、複数の合成樹脂
捲縮糸が互いに絡み合いながらそれらの
接点で融着してなる合成樹脂捲縮糸集合
体を用いて構成されていることを特徴と
する。」んだそうです。
合成樹脂はどんなものを使うのかと
いうと、請求項の5に書かれており、
「発泡処理されていないEVA樹脂
(エチレン酢酸ビニルコポリマー)
又はそれを基礎とする糸」なんだ
そうです。
だから「EVERTUBE」ではなくて、
「EVARTUBE」だったんですね。
この樹脂糸を使う利点は、「合成樹脂
製弾性発泡体やシリコーンゴムを充てん
すると、タイヤチューブ全体の重量が
少なくとも2,000g以上になるため、
空気タイヤの軽快性が損なわれ、合成
樹脂製弾性発泡体は、シリコーンゴム
よりも軽いものの、水分を吸収しやすく、
タイヤチューブ内に侵入した湿気を吸収
したとき、タイヤチューブ全体の重量が
増加するだけでなく、経年劣化が早まって
しまうという問題があったし、合成樹脂製
弾性発泡体やシリコーンゴムを充てん
する場合、タイヤチューブの形状が意図
せずに決定してしまうため、タイヤチューブ
の形状が適切でない場合、タイヤの
縁部をホイールリムに押しつける力が
不十分となり、ホイールリムからタイヤが
外れやすくなったり、重量バランスや剛性が
不均一となるため、このタイヤチューブを
利用する自転車等の乗り物の乗り心地が
悪化したり、いろんな問題点があった。」
のですが、本考案ではこれらを解決でき
るんだそうです。
ということで、これを売り出せば、結構
売れるのではないかと思うのですが、
ひとつ気になるのは、「登録が実用新案」
というところなんです。
これがちょろちょろと売れている場合には
真似する人はあまりいないと思うのですが、
これが爆発的に売れた場合には、真似する
人が出てくると思うんです。
そうすると、「侵害だ―」などとお上に
訴え出ても、実用新案というのは、実体
審査を経ていませんので、逆に「無効だ、
無効だー」などと言われてしまう可能性が
高いんです。
これを避けるために、特許法では、
46条の2というところで、「実用新案
登録に基づく特許出願」というもので、
特許での権利取得の道もあるのですが、
これは実用新案登録出願の日から
3年を経過するとできなくなり、出願日が
2012年11月ですので、もう3年が
経過してしまっているんです。
(私が調べた時にはこの特許出願が
されたという情報はありませんでしたが、
特許庁の情報のタイムラグもあります
ので、確認にはもう少し経たないとわか
りませんが)
さらには、爆発的に売れた時には、
海外では権利を取得していませんので、
自転車大国!!!中国などでどんどん
真似されてしまう可能性があるんです。
ということですので、知財戦略を考える
場合には、ヒット商品につながる可能性が
あるような場合には、特許で権利を取得
するとともに、売れそうな国で権利を取得
することを考えておく必要があるんです。
特許での権利取得や、海外出願には、
中小企業ではお金の問題がクローズ
アップされてきますが、以下のように、
特許庁さんなどの支援策もありますので、
これらを大いに活用しましょう。
平成27年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(中小企業外国出願支援事業) | 経済産業省 特許庁